hoho!

みえないものをさわる

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冬の空気は私をどこまでも喜ばせてくれる。特に、冬の空気にすかして見える人工的な明かりなどは、興奮すら誘う。これまで起こった楽しいことやすこし痛いけどわくわくしたことなど、思い出せば全部冬にあったような気がするのは、きっとそれらの出来事を冬の空気という薄い水色のセロハンを通して見ているからなのだろう。そのくらい特別な、冬が、ちゃんとここにもやってきた。

極端な香水の匂い。美味しそうな焼き芋。タバコのけむり。淀んだ空。鼻の骨。暖かい本屋さん。満員の地下鉄でキス。冷たい漆喰の壁。湯たんぽ。


気がつけば毎日は鮮やかに優しく過ぎていて、私はこの時間を「人生のバカンス」と呼ぶことで、いつかは失われるのだと自分に言い聞かせている。そうでもしないと、素晴らしすぎて怖い。


すぐそこに次の年が待機している。
もっとすぐそこに、次の日がまってる。

それが新たな希望だと思える瞬間、
私は私ではないような感覚に陥る。