hoho!

みえないものをさわる

oui oui


朝のはなし

ルームメイトが家を出て行く音で目覚める。
起きてまず確かめるのは、隣の部屋と私の部屋をつないでいる穴。そこに住むルームメイトは一番のゆっくりさんなので、彼女が起きているということはかなり遅い時間。穴からは優しい明かりがもれている。つまりもう、遅い時間。いつもは家を出ている時間だ。
いそいで黒いワンピースとカーデガンを羽織り、紺色のタイツをはく。制服のように来ているのでくたびれてきた。つぎに教科書、きのうマーケットでかったガーリックラスクの大きな袋、充電中のアイパッド、タンブラー、ノキアの携帯をかばんにつめる。髪の毛をとかして、アイラインをひいて、靴をはきながらエレベーターのボタンを押す。窓の外はもやがいっぱい。七分で準備。
29階から大急ぎで地下へ。警備員のお兄ちゃんたちが道を塞いでいるのを蹴散らすように外へ飛び出る。小走りでバス停へ着くと、お目当てのバスがすぐにやってきた。一番後ろの席に座り、まずひとくちガーリックラスクをたべる。すると隣のお兄さんがミントのタブレットを取り出して食べ出した。きっとこのニンニクの匂いが自分の口臭だと思ったんだろう。ちがうよ。それが終わると宿題の続き。映画のワンシーンの説明をするという宿題。私はトイストーリー2の、ジェシーが昔の楽しい日々を懐古しているところを選んでいたのだが、まだ訳しきれていなかった。隣のネイティブに笑われそうな訳を終わらせると、学校についた。
あんなに急いだからか、教室の中にはイタリアンの男の子一人。ほっとして100度のお湯を飲む。きょうはクラスメイトの34歳の誕生日だからと、ろうそくとケーキを用意していた。34歳と聞いて驚く。彼は頭こそ若干薄くなっているものの、少年のようなジョークばかりとばしていたから。彼は教室に入るとびっくりしながら、34とかめっちゃオールドじゃん、と笑っていた。みんな笑ってた。ここにきて、サプライズの多さに圧倒されている。喜ばせるのが好きなのね。すてきだなあ。
大好きな先生の授業でみんなもワクワク。こんな時間がずっと続いたらいいのに。もう直ぐ、学期が終わって、それぞれの職場や大学に戻ったり、続けたり。バラバラになる。
今日のお昼は食堂へいこうかな。それとも家の食材を片付けるべきか。