NELLO
iPhoneのこときれかたは潔い。
というよりも、その命の危機を知らせるサインに、私が鈍感になっているのだろう。
大雨の降る窓をみながら、いつこのシャワーに飛び込んでいこうかと思案していると、突然iPhoneの画面は真っ暗になった。
手持ち無沙汰になったので、職場をあとにし、駅にむかう。雨に濡れても走らない。太ももが今日の使用量の限界に近づいていた。
ジャケットもワンピースもフラットシューズも不細工に濡れて、不快になる。そして目の前で電車が発車してしまう。いっそうの、不快。
ベンチに座って落ちる雨を睨みつつ、暇な手を使って財布の中身を出したりいれたりする。時間が立つのが牛の歩くはやさ。
暇に弱くなった。現代病だ。
となりに来た男性は疲れていて、力なくベンチに腰をおろす。
赤いシャツに白い半ズボンに、無精髭にみせかけた設計のもとにのばされた髭。長い髪、
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流れてくる香水のにおいは、十分に雨に濡れていて、鼻に心地よい。
まだまだ雨はふっていて
まだまだ電車はやってこない
わたしがどんなに嗅いでも
まだまだ香水の匂いはやまない
夜はもうすぐ12時に向かう
それでも大丈夫